2022年11月号 | 創明館便り

中高生のころ、ラジオから流れる音楽の「エアチェック」に凝った。
FM放送の番組紹介冊子を買って、
「何日の何時からこの放送を録音」などと計画を立て、
独自の音楽録音カセットテープを編集して楽しんでいた。
今では「エアチェック」という言葉は全く聞くことがなくなったが、
当時「録音」などという言い方を避けるかのように流行った言葉であった。
 思い返すと、積極的にラジオと触れ合った最初の経験は、この中高生時代だった。
ラジオの深夜放送を遅くまで寝どこで聞きながら、学校で「○○聞いたか?」などと、
睡魔に打ち勝ち、寝ないでラジオ番組を聞くことを誇らしげに話したりもする時代だった。
 そんな最初の出会いから半世紀、今になってラジオの面白さを再発見し、
積極的にラジオを聴いている。
タイムリーに聴けないラジオ番組が聴ける便利なアプリのおかげもあって、
好きな場所で好みの番組を聴けるのがありがたい。
 ラジオの面白さの一つに「想像力」を働かさせられることが多くある、といった点があげられる。
テレビが普及し始めたころ、
テレビの配信する映像音声をただ受動的に受け止めるだけだからといった理由から
「一億総白痴化」という言葉が話題になった。能動的に本を読むほどには、
「想像力、思考力」を必要とさせない番組を流し続け、
「ぼんやりとその映像を見続けてしまう」ことの弊害を唱えた言葉だった。
もちろん、映像ならではの配信価値もあるわけで、
映像という強い刺激が及ぼす脳への影響に対する警鐘を唱えた言葉であった。
 ラジオには「映像」がない。強烈に脳を支配してしまう刺激がない。
だから流れてくる言葉からその情景を想像したり、話の内容を思索する瞬間が得られたりする。
これが面白い。意図的に映像にくぎ付けにさせようなどという策略もないし、
何らかの作業をしながらといった、タイム・パフォーマンス(時間対効果)もよい。
写真・映像SNSばやりの今の時世ではあっても、失われない、写真・映像のないメデイアの良さを再認識している。

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この記事を書いた人
創明館 吉田

塾代表 吉田聡彦 : 練馬区高松(光が丘・夏の雲公園前)にある小学生・中学生・高校生向けのグループ/個人の学習塾を運営しています。
塾運営での想い、感じたこと、発信したいことなどを更新しています。

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