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2017年8月号 | 創明館便り

「児童・生徒」と呼ばれた時代から「学生」と呼ばれた時代まで
その「長い夏休み」の存在は大きな楽しみであった。
何か楽しみなことがあるから、というわけではない。
「旅行する」とかそんなイベントの楽しさに引かれるわけでなく、
ただ単に「自由」な時間が与えられたこと、そのことそのものが大きな喜びだった。
中学高校時代は「部活動」とかそれなりに拘束される時間もあったけれど、
やはり日々学校に通い、時間割に沿って授業のある生活からの解放は、
大きな喜びであった。
「自由が与えられたこと」そのことが、
「自由な時間そのもの」よりも嬉しく感じていたのだろうと思う。

7月上旬、尾瀬に行った。
尾瀬は大好きな場所。年に一度は季節を違えても必ず行く場所。
広大な尾瀬ヶ原の木道を歩く自分は何度も
「この光景を忘れたくない、忘れたくない」と思いながら歩く。
見て、見て感じて、それがそのまま脳裏にスクリーンとして残ってくれはしないかと、
そんなことを願いつ歩く。
足もとと、「至仏(しぶつ)」「燧(ひうち)ケ岳」の両山を仰ぎ望みながらの木道歩き、
広大な尾瀬湿原のはるか遠くまで見渡せるその光景は
いつ歩いても感動を与えてくれる。

そんな大好きな尾瀬に梅雨の最中(さなか)に行った。
曇り、時に晴れ間の見える朝方、テント場までたどり着き、テント設営。
ほどなくしての激しい雨。
予定の山行はやめてテント内で停滞した。
その与えられた翌朝までのおよそ20時間というその時間、
私はその自由な時間を与えられたことの幸せを味わっていった。
電波のないその環境にまったりと馴染んでいきながら、「自由な時間」を楽しんだ、
いや、「自由な時間が与えられたこと」を楽しんだ。

 生涯最長の「自由な時間」は大学3年生の夏休みに得られた。
上京して最初の大学での3年生のとき、
その夏休みを利用して40日間インド・ネパールを一人旅した。
当時、ビートルズの影響もあって学生たちの間でインド旅行がブームであった。
友人の話を聞き、自分も是非、との思いで、アルバイトで資金をため
日本を離れての長い長い「自由な時間」を得た。
帰国の便は決めてあったがそれまでの行程、過ごし方に与えられた自由度は
私の人生最長の期間であったことは間違いない。
時間に追われず1日1日を過ごした日々。
思い返すと懐かしい。

 異国というのは、「自分の生まれ育った環境が自分という人間を作ってきたのだ」と
考えさせられる場面にたびたび出くわす。
「カルチャーショック」といわれるものだ。
20歳のその時、「日本という環境が自分を作ってきたのだ」と思い知り、
それまでの自分の価値観を客観視する機会を与えられた。
日本で暮らし続けていたら絶対に得られない異国の人びとの価値観。
そういうものに若い頃触れ合えたことは意義深いことだったと振り返る。

 生きてきた中で作り上げられてきた「自我」なり「自分の殻」「自分の価値観」を
外から見つめ直すことにつながりかねないような、そんな貴重な経験・体験をすることができたら、
心に残る思い出の夏休みとなるのだろう。

創明館便り
この記事を書いた人
創明館 吉田

塾代表 吉田聡彦 : 練馬区高松(光が丘・夏の雲公園前)にある小学生・中学生・高校生向けのグループ/個人の学習塾を運営しています。
塾運営での想い、感じたこと、発信したいことなどを更新しています。

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