北アルプスで、子供の登山者と出くわすことはまれである。
当然、子供の登山者は目に留まる。
この夏休み、後(うしろ)立山(たてやま)連峰と呼ばれる北アルプス北部を縦走中、
宿泊小屋の前で、その親子に出会った。
小学6年生の男の子とそのお母さんだ。
「コロナで家にこもりっきりで、ゲームの楽しさだけでない楽しさを伝えたかった」
「そうだ、山だ。」とお母さんが思い立ったのは、
息子さん小学3年生の時。
最初の山が、北海道知床の羅臼(らうす)岳、
次が屋久島の宮之浦(みやのうら)岳と
日本列島東西両端の日本百名山の登頂から始まり、
そして、今回出会ったときは、
当日、百名山98座目の登頂を成し遂げ、
小屋にたどりついた時だった。
この夏休みで日本100名山完全登頂を成し遂げるという、
その偉業にただただ驚いた。
「一番印象に残っている山は?」と問うと、「羅臼岳」。
「山はおもしろい」と話す少年の、
山好きにさせたその原点が最初に登った山にあったということだ。
「経験」して、自分の「好き」を知る、その典型だ。
「中学に入ると部活動で忙しくなるから」と小学時代での完全登頂達成。
偉業の中で得た様々な、知恵、体験、達成感が、
少年にとって生きていく上でとても大きな支えとなっていくのだろうと思った。