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2016年12月号 | 創明館便り

「こころが育つ」こんな言葉を生徒の口から聞いたのは初めてのような気がする。
中学校の定期考査、課題図書を読んでの感想、そこで発せられた言葉、それがこの言葉。
読書の真髄ともいえるこの言葉を生徒の口から聞いて「そうなんだよな」と心の中でつぶやく自分。
偉そうに、「そうです、読書の真髄はそこなのです」などといったりできないし、
言うことの後ろめたさを感じる自分はそっと心の中で
「読書のすばらしさを実感できて良かった」と思い入る。

人として生まれ、人として生き、人として死んでいく。
その中でほかの生きものと違う面を顕著に表すことができるのは、
「人として生きる」ということ。
生まれ方も、死に方もそこに他の生き物との差異はない。
「どのように生きるか」その点において、
その点の自由さを最も持ちあわせた動物が「人間」といえる。
その生き方を人はどのようにして身につけていくのか、学んでいくのか。

「生育環境」という言葉がある。
言葉の通り「生まれ育った環境」ということである。
良しにつけ悪しきにつけ、
人の生き方はその生育環境にかなりの部分依存しているし、依存していく。
その生まれ育った環境から得られた経験、知識、考え方が、
その人の生き方に影響を及ぼしていく。
日本人が他国の人々の考え方、生き方と違うのと同じように、
「我が家で育つ自分」と「隣の家で育つ自分」とで、「自分」は変わらない、と思っても
まったく違った「自分」であろうことは、容易に想像がつく。

環境がその人間の生き方に大きく影響を及ぼす、
その理由は、環境がその人間の「心」を育てるからである。
日本の環境が「日本人」を育て「我が家の環境」が「私」を作り上げてきたのである。
自身振り返って、大学生として上京し、
生まれ育った家庭を外から見る機会を与えられ、そのとき知ったこと。
そしてまた、日本を離れた経験により、
「日本人として育った自分」を認識させられる機会を得たこと。
これらのことは、「環境に大きく依存してきた自分の心」というものを認識した
貴重な体験であった、と思う。

「自分の考え、心」などといっても所詮は「環境」が育てたもの。
そんな「生育環境」に限定されずに、自分の知らない環境を知ることで自分の心を育てることができる、
そんな出合いを読書は与えてくれる。
人間は「想像」することができる唯一の生き物であるように思う。
そして、この「想像力」を高めるにあたって「読書」の役割は大きいし、
豊かな想像力こそ「心」を育てる鍵であることに違いないと思う。

創明館便り
この記事を書いた人
創明館 吉田

塾代表 吉田聡彦 : 練馬区高松(光が丘・夏の雲公園前)にある小学生・中学生・高校生向けのグループ/個人の学習塾を運営しています。
塾運営での想い、感じたこと、発信したいことなどを更新しています。

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