2024年2月号 | 創明館便り

「君たちはどう生きるか」この書名に初めて触れたのは、
中学生の頃のような気がする。
その後の学生時代、たびたびこの書名を目にした。
ただ、当時このタイトルを目にするたびに、
そのタイトルから浮かべる強い、道徳的、倫理的な書というイメージが付きまとい、
ついぞ本を読むことはなく過ごした。
2017年、漫画「君たちはどう生きるか」が発刊され大きな話題になった。
塾の文庫に漫画版を置き、自身もおよそ40年の時を経て
その原作「君たちはどう生きるか(吉野源三郎)」を手にして読んだ。
「読まず嫌い」とはこのことだった。
叔父さんが中学生の甥コペル君にノートに書いた手紙形式で
大変深く分かりやすく「生き方」について伝えていくその様子、
内容にとても引き込まれた。
コペル君と同じ年代に読む機会が与えられていたのに、読まなかった。
当時の自分が読めばきっと心に大きな柱ができたのだろうにと、悔やんだ。
同名のアニメ映画(作品内容は異なる)が話題になったことで、
その作品を思い出し、再度読み始めた。
「コペル君」というあだ名の由来の紹介でもある冒頭の「ものの見方について」の部分、
その叔父さんのノートには
『自分たちの地球が宇宙の中心だという考えにかじりついていた間、
人類には宇宙の本当のことがわからなかったと同様に、
自分ばかりを中心にして、物事を判断してゆくと、
世の中の本当のことも、ついに知ることができないでしょう。
大きな真理は、そういう人の眼には、決してうつらないのだ。』と記す。
「地球を中心に天が動く(天動説)」
「自分を中心に社会が動く」という考えの底に存在する、
人間に生来備わった、根深く頑固な性質の存在。
それをしっかりと理解しわきまえたうえで、
世の中の本当のことを知ろうとする努力の必要性が説かれている。
 日本という国に軍国主義が徐々に強くはびこり始めた時代に、
「次の時代を担う子供たちを時勢の悪い影響から守りたい」
「人類の進歩についての信念を養わせたい」
そのような発刊への強い思いでの出版とのこと。
長く読み継がれるだけの名著です。

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この記事を書いた人
創明館 吉田

塾代表 吉田聡彦 : 練馬区高松(光が丘・夏の雲公園前)にある小学生・中学生・高校生向けのグループ/個人の学習塾を運営しています。
塾運営での想い、感じたこと、発信したいことなどを更新しています。

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