「君たちはどう生きるか」この書名に初めて触れたのは、
中学生の頃のような気がする。
その後の学生時代、たびたびこの書名を目にした。
ただ、当時このタイトルを目にするたびに、
そのタイトルから浮かべる強い、道徳的、倫理的な書というイメージが付きまとい、
ついぞ本を読むことはなく過ごした。
2017年、漫画「君たちはどう生きるか」が発刊され大きな話題になった。
塾の文庫に漫画版を置き、自身もおよそ40年の時を経て
その原作「君たちはどう生きるか(吉野源三郎)」を手にして読んだ。
「読まず嫌い」とはこのことだった。
叔父さんが中学生の甥コペル君にノートに書いた手紙形式で
大変深く分かりやすく「生き方」について伝えていくその様子、
内容にとても引き込まれた。
コペル君と同じ年代に読む機会が与えられていたのに、読まなかった。
当時の自分が読めばきっと心に大きな柱ができたのだろうにと、悔やんだ。
同名のアニメ映画(作品内容は異なる)が話題になったことで、
その作品を思い出し、再度読み始めた。
「コペル君」というあだ名の由来の紹介でもある冒頭の「ものの見方について」の部分、
その叔父さんのノートには
『自分たちの地球が宇宙の中心だという考えにかじりついていた間、
人類には宇宙の本当のことがわからなかったと同様に、
自分ばかりを中心にして、物事を判断してゆくと、
世の中の本当のことも、ついに知ることができないでしょう。
大きな真理は、そういう人の眼には、決してうつらないのだ。』と記す。
「地球を中心に天が動く(天動説)」
「自分を中心に社会が動く」という考えの底に存在する、
人間に生来備わった、根深く頑固な性質の存在。
それをしっかりと理解しわきまえたうえで、
世の中の本当のことを知ろうとする努力の必要性が説かれている。
日本という国に軍国主義が徐々に強くはびこり始めた時代に、
「次の時代を担う子供たちを時勢の悪い影響から守りたい」
「人類の進歩についての信念を養わせたい」
そのような発刊への強い思いでの出版とのこと。
長く読み継がれるだけの名著です。