埼玉県秩父に武甲山という山があります。
その多くが石灰岩(太古の生物の遺骸が固まってできた岩石)でできている山です。
石灰岩はセメントの材料となりますから、
山の麓にはセメント工場があり、
大きなトラックが行き来しています。
石灰岩を採掘された武甲山のその山容の不自然さは、
秩父の市街地からはもちろん、
秩父盆地の反対側の丘陵地からもはっきりと目にすることができます。
私たちが太古の生物の恩恵を受けていることを
はっきりと知ることができます。
一方、化石燃料(石炭、石油、天然ガス)といった
こちらも太古の生物の恩恵によるエネルギー源は、
その地中での存在のため、ふだん目にしません。
目にしない地中にあるそれらを消費することで
今の人類が生存しています。
目にしないから、その消費がやがての枯渇につながることを意識しづらいのですが、
武甲の姿ははっきりと私たちにその事実を知らしめます。
武甲山のその大きな変容ぶりを目にすることで
改めて知る古代生物の存在の大きさ、有難さです。
自然界は変化し続け、人間社会も当然然りです。
かつての日常を懐古、その変化に戸惑いつつも、
「ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず。……」(鴨長明 方丈記)
の教えを思い浮かべています。
2020年12月号 | 創明館便り
