新聞のコラムで「実語教」を知った。
平安から明治時代まで子供たちを育ててきた教科書のようである。
江戸時代の「寺小屋」で最も普及したようで、
その教えはまさに日本人の価値観を後ろ盾しているように感じる。
「山高きが故に貴からず(山高故不貴)
樹有るを以って貴しとす(以有樹為貴)」
「人肥えたるが故に貴からず(人肥故不貴)
智有るを以って貴しとす(以有智為貴)」
という始まりだ。
文頭、「山は高いがゆえに貴いのではない。樹があるからこそ貴い」
というこの冒頭のわずか10文字が
その教えんとすることを考えると
いろいろに思いが巡る。
おなじみの「『声に出して読みたい…』シリーズ」でも紹介されている作者不詳のこの教文が
日本最長の教科書であることに間違いはない。
2021年度は「新学習指導要領の中学校全面実施」の年であり、
中学校教科書の改訂が行われる。
新教科書は、新学習指導要領下、大幅な改訂が行われ、
特に英語教育の大きな変化は、
「大学入学共通テスト」にもみられた顕著な流れだ。
「タブレット端末」が本格導入され、「デジタル教科書」の試験活用も始まる。
一方、人間の脳はまだそのデジタルデータを十分に活用でき、
処理できるようには育ってないとのことも聞く。
デジタルならではの有用は活用しつつも、
手が触れる紙の触感という刺激も脳にとって大切だと思え、
失いたくはないものである。
10年ごとに改訂される「学習指導要領」。
これからの10年が次の「学習指導要領」を決めていく。
時代の変化とともに変わり続ける学びは
その時代を生きていく人にとって当然必要だが、
「実語教」のようにおよそ1000年もの間、
教科書として使われてきたものが教えることも大切にしたい。
「倉の内の材は朽ちることあり
身の内の才は朽ちることなし(倉内財有朽 身
内才無朽)」
この10文字が「学び」への欲を生むことが素晴らしいと思う。