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2021年2月号 | 創明館便り

新聞のコラムで「実語教」を知った。
平安から明治時代まで子供たちを育ててきた教科書のようである。
江戸時代の「寺小屋」で最も普及したようで、
その教えはまさに日本人の価値観を後ろ盾しているように感じる。
「山高きが故に貴からず(山高故不貴)
 樹有るを以って貴しとす(以有樹為貴)」
「人肥えたるが故に貴からず(人肥故不貴)
 智有るを以って貴しとす(以有智為貴)」
という始まりだ。
文頭、「山は高いがゆえに貴いのではない。樹があるからこそ貴い」
というこの冒頭のわずか10文字が
その教えんとすることを考えると
いろいろに思いが巡る。
おなじみの「『声に出して読みたい…』シリーズ」でも紹介されている作者不詳のこの教文が
日本最長の教科書であることに間違いはない。
 2021年度は「新学習指導要領の中学校全面実施」の年であり、
中学校教科書の改訂が行われる。
新教科書は、新学習指導要領下、大幅な改訂が行われ、
特に英語教育の大きな変化は、
「大学入学共通テスト」にもみられた顕著な流れだ。
「タブレット端末」が本格導入され、「デジタル教科書」の試験活用も始まる。
一方、人間の脳はまだそのデジタルデータを十分に活用でき、
処理できるようには育ってないとのことも聞く。
デジタルならではの有用は活用しつつも、
手が触れる紙の触感という刺激も脳にとって大切だと思え、
失いたくはないものである。
 10年ごとに改訂される「学習指導要領」。
これからの10年が次の「学習指導要領」を決めていく。
時代の変化とともに変わり続ける学びは
その時代を生きていく人にとって当然必要だが、
「実語教」のようにおよそ1000年もの間、
教科書として使われてきたものが教えることも大切にしたい。
「倉の内の材は朽ちることあり
 身の内の才は朽ちることなし(倉内財有朽 身
内才無朽)」 
この10文字が「学び」への欲を生むことが素晴らしいと思う。

創明館便り
この記事を書いた人
創明館 吉田

塾代表 吉田聡彦 : 練馬区高松(光が丘・夏の雲公園前)にある小学生・中学生・高校生向けのグループ/個人の学習塾を運営しています。
塾運営での想い、感じたこと、発信したいことなどを更新しています。

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