2023年5月号 | 創明館便り

遊んだ時の記憶は薄れても、歌った歌は記憶に残る、
そんな思いにさせてくれる「遊び歌」。
その一つに「通りゃんせ」がある。
きっと小学低学年のころだったのだろう、
家の前の路地での近所の子たちとの遊びの一つに「通りゃんせ」があった。
「怖い帰り道、誰がとらえられるのか?」
そんなことにわくわくドキドキしながら遊んだものだった。
その歌詞に「この子の七つのお祝いに『お札(ふだ)』を納めに参ります」という節がある。
『お札』って何だろうと気にはなるものの、
さして気にもかけず、ただただ歌って遊んでいた。
『お札』という言葉を知ったのはそんな子供の時だったが、
実際にお札をお寺に納めるようになったのはそれから30年余りの月日が経った後だった。
 埼玉県秩父地方には34の観音霊場(お寺、札所)があり、
多くの人が札所巡りをしている。
巡礼道と呼ばれる札所間の道は、今では車で通れるように広く舗装されているが、
かつての歩いて巡礼が行われていたころの「巡礼古道」が随所に残っている。
私は歩いて巡礼をするときは当然のように古道を選ぶ。
 数年前の寒い時期だった。
里山の中に切り開かれた古道を歩いていたら、思わぬ光景に目を奪われた。
そもそも山中古道で人と会うことが珍しい中、
見たところ80歳は超えておられる方が、
杖を片手に山道を歩いておられた。
その杖も不自由な足の動きをサポートするためのものであることはすぐにわかった。
舗装された新道であっても歩行は決して容易ではないだろう、と感じさせる歩みだった。
でも、その方の歩みは、強い信念で「前に進む」という意志を感じさせるものだった。
周りの言葉を寄せ付けないようなその姿、歩みに私は圧倒された。
 諸行無常に救われもし、戸惑いもし、
そして今、あまりにも速い社会の変化にたじろぐ。
変わらぬもの変わっていかないであろうものに心惹かれる。
20年後、感動をもらえたあの巡礼古道は果たして残っているのだろうか。
是非残っていて欲しいものの一つである。

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この記事を書いた人
創明館 吉田

塾代表 吉田聡彦 : 練馬区高松(光が丘・夏の雲公園前)にある小学生・中学生・高校生向けのグループ/個人の学習塾を運営しています。
塾運営での想い、感じたこと、発信したいことなどを更新しています。

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