誰もが知っている「ドラえもん」。
私自身、その原作を読み、そのアニメをきちんと見たことはなかった。
昔、息子が夢中になって読んでいるのは知っていた。
ドラえもんの漫画がずらりと書棚に並んでいたのも目にしていた。
でも、手にとって読むことはなかった。あれから、二十年あまり。
一冊の書物を目にしたことから「ドラえもん」に興味をもった。
『人生で必要なことは、すべて「ドラえもん」が教えてくれた。』(横山泰行 著)である。
大学の名誉教授で、教育学博士、ドラえもんアナリストの氏が分析する、
「ドラえもん学」そこにかかれていることは教育学者としての氏の深い分析。
氏はドラえもんの持つ5つの力、
「ほめる力」「叱る力」「気づかせる力」「行動させる力」「学ばせる力」について詳しく分析したのち、
この5つの力の集合体である「育て力」によって、
ドラえもんがのび太を大変身させることに成功した、と記している。
氏は『「のび太」という生きかた』の中で、「成功体験」の大切さを説く。
のび太の持つ、「目の前に次々に現れる問題に対して対応し、乗り越える力」の原動力になっているのは、
「のび太に成功体験が多いからだ」と説く。
決して大きな成功体験でなく、小さな簡単に実現する成功の体験の積み重ねが、
そしてそこから得られる爽快感、達成感が大きな困難に立ち向かう原動力になっていると説く。
さらにのび太の原動力のもととなる大きな存在の一つが、「期待され励まされた体験」である。
両親、おばあちゃんに励まされた体験が、
勇気をもって未来につき進むエネルギーを得ることにつながっていると、その重要性を説く。
人が生きていくうえで大切な「自己肯定観」。
それを得るための、外からの内からのアプローチ。
人に認められ励まされた経験、思い出が「落ち込んだ自分」に勇気を与えてくれるというのが外からのアプローチ。小さな成功体験の積み重ねで自分を認め自信を得ていくというのが内からのアプローチ。
その、両側からのはたらきかけが「自己肯定観」を築きあげていく、ということなのだと思う。
ドラえもんの作者、藤子・F・不二雄氏の子供たちへの大切なメッセージを私自身味わってみたいと思った。
少年時代漫画を通して学んだことも多かったと回顧し、と同時に、塾生たちにとっても人生の大切なヒントが得られるのでは、と思ったりする。
そんなことで、創明館の蔵書として「ドラえもん」を置くことにした。