2016年9月号 | 創明館便り

「天は人の上に人を造らず、人の下に人を造らずと言えり」とは、
慶應義塾大学の創設者、福沢諭吉の『学問のすゝめ』の中の有名なフレーズである。
この言葉、フレーズだけを読むと「『人間の平等性』を述べている」と思ってしまう。
だが実際は違う。
書のタイトルにあるように「学問を勧めている」のである。
「学びから得られる智」の大切さを説き、
「智の有無」が与える人間の境遇の差について触れている書なのである。

 子供たちにとって、「テストでよい点をとりたい」「良い成績をつけたい」といった動機が
勉強のモチベーションのスタートラインになっているのは確かである。
「どうして勉強するの?」と問えば、「テストでいい点を取りたいから」「よい評価を得たいから」と答える。
これがスタートライン。
次にその目標が「志望校に合格するため」などにステップアップする。
大学合格後も試験はあるから、試験勉強をする。そしてその評価を得る。
社会に出ても同様、試験はある。試験に向けて勉強をする。その評価を得る。

 こうやって見ていくと「試験」というのは人間社会が生み出した「人を勉強させる便利なツール」と言える。
数字で評価する「テストの得点、成績評定」にしても、「合否」という指標にしても大変わかりやすいものだから、
先人が後輩に勉強させるために生み出したものとして大いに納得がいくものである。
こうしたツールを利用して人々を勉強させるその目的はいったい何か。
「テストの評価に一喜一憂させるために勉強させるわけではない」のではあるが、
その先にある「勉強の目的は?」のひとつの回答が冒頭『学問のすゝめ』に説かれている。

 福沢諭吉は、人が独立して生きていくために「智」が必要であること、
そしてその「智」は学びによって得られる、と説く。
つまり「従属させられることなく独立して自由に生きていくために『勉強』が必要である」ということである。
自分の人生の選択肢をより多く持つために、つまりは人生の自由度を高めるために『勉強』を勧めている。

 私自身、中学生の頃からの夢に向かって大学進学後、
その抱いていた夢の現実に興ざめ、新たな夢を求めた時、
それまでの学生時代の学びの蓄積があることに助けられた、そんな人生でもある。

「勉強しておいてよかった」

自分の思うように運営できる塾を営むなかで私が思うこと、である。

 

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この記事を書いた人
創明館 吉田

塾代表 吉田聡彦 : 練馬区高松(光が丘・夏の雲公園前)にある小学生・中学生・高校生向けのグループ/個人の学習塾を運営しています。
塾運営での想い、感じたこと、発信したいことなどを更新しています。

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