「本は自分の味方だから」
「まわりに生き方の見本となるような人がいなければ本の中に探してみよう」 と、
中学生たちに語りかける書店主。
「日本一幸せな本屋」と称する書店主のドキュメンタリー番組を見た。
本を愛し、本の素晴らしさを知っている氏の素敵なことば、
それが冒頭の一節である。
「本は自分の見方だから」
こんな素敵なことばを子どもたちに伝える氏に深く感銘を受けた。
若かりし頃、自身、悩み、心の整理がつかない時に
「本の中のことば」に助けを求めたことが度々あった。
本の中のことばに勇気づけられ、
ネガティブ思考の負の連鎖から脱出させてもらったり、
迷いの中での灯りをともしてもらったり、
また反対にさらなる迷いの世界に引き込んでくれたりなどと、
いろんな時を本は私に与えてくれた。
書店に行き、本のタイトルや帯を見ながら、
凝り固まった心に雫を落としてくれそうな、
そんな本との出合いを求めたあのときは、
まさに、自分は「自分の味方」を探していたのだ、
そんなことを考えさせてくれた番組だった。
作家小川洋子氏はその著「はじめての文学」の文末、
『あの頃本を読むことは、学校や家族や、そんなちっぽけな場所から脱出し、
世界の果てを旅して、自分の小さな足跡を残すことだった』と述懐されている。
『彼のまわりだけが、圧倒的な静けさに満たされ、何ものもそれを侵せない。
彼は今、そこにいない遠くの誰かと秘密の会話をしている。』と、
読書する人びとを描写する。
「勉強しなさい」と言われて育てられる子供が勉強嫌いになるのと同じで、
「本を読みなさい」と言われて育つ子が本を好きになるとは思えない。
どんなこともきっと同じで、
自らがその面白さを感じた時に得られた心があってこそだ。
私は今、「本を読みたい」と思って生きている。
「好きな本」との出合いを求めて生きている。
「本は心のビタミン」なんて言われたりするが、 「素敵なビタミン」との出合いを期待している。