大きな船の広い機関室の中には、
船を動かすエンジンやひと時も止めることなく幾日にもわたって
プロペラの回転を維持し続けるための装置、機器がいくつも組み込まれています。
それらの装置、機器が機関室中に張り巡らされた配管で繋がり、
陸から遠く離れた洋上での長い航行を可能にしています。
配管の中には、「燃料」「潤滑油」「海水」「清水(真水)」などが流れており、
それぞれの役割を果たしています。
これらの中で洋上で手に入れられないものは何でしょう?
海水以外のもの全てかと思いがちですが、
大きな船の中には「造水器」と呼ばれる、
海水から真水を作る機器が備えられています。
気圧を下げると、水が100℃にならなくても沸騰することを利用して、
海水を沸騰させ出てきた水蒸気を冷やして真水を作るという方法(蒸留といいます)によって、
海水から真水を手に入れます。
手に入れた真水は、乗組員の生活用水だけでなく、
機械、機器の冷却などにも使われます。
「造水器」という言葉をロボット教室のスタッフから聞いた時、
はるか40年以上前の光景が目に浮かびました。
外国航路の船員を志し、上京した大学で学び、
その乗船実習、練習船の機関室で造水器を見たときの印象が蘇りました。
大変懐かしく耳にした言葉でした。
母校の後輩でもあるそのスタッフは、
造水器のトラブルを機関士が緊急対応で応急解決したことを話してくれました。
その時思いました。
「大きな船であっても航海士が船橋(せんきょう)(ブリッジ)で操舵しさえすれば動くのだろう。
でも、機関のトラブルに対応できるのは機関士でしかないのだろう」。
機転を働かせて、トラブルを解決する。
こんな瞬時の臨機応変な対応というのは人間が得意としていける事なのかなと思ったりします。
「ロボット」や「AI」がより優れ、発展していっても、
それらに「かっこよさ」を私はまず感じないでしょう。
でも、この機関士のような人は、とっても「かっこいい」と思います。