2010年10月号 | 創明館便り

『 東(ひむかし)の  野に炎(かぎろひ)の  立つ見えて 
      かへり見すれば  月傾(かたぶ)きぬ 』 (柿本人麻呂:万葉集)
注) 炎…あけぼのの光   かへり見すれば…振り返って見てみると

 この和歌は中学3年生の国語の教科書で紹介されている万葉集の中の一首です。
私自身が中学3年生の時も同じように教科書に出ており、国語の授業で先生に紹介されました。
当時この歌の意味することを特段深く、印象深く感銘を受けたわけではなく、
天空の広がりを歌った歌であるとの先生の説明に「それがいったい何なの?」というような印象を持った記憶があります。
特に印象の深かった歌ではなかったのですが、頭の底の方に残っていた歌で、
先日この歌がふと頭をよぎり口ずさむ時がありました。

この歌で歌われている情景は
「東の地平線から太陽がまさに昇ってこようとするときに西の地平線に月が沈もうとしている」というものです。
月と太陽がまさに天空での主役を受け渡すかのような情景ですが、ここで一つおさえておきたいことがあります。
それはこの時の月の満ち欠けは満月もしくはそれに近い形であるということです。
月は太陽の光を受けながら地球の周りを公転していますが、
太陽と月が地球から正反対の方角に見えるときの月は満月になります。
太陽と同じ方角にあるときの月が新月で15日後満月をむかえます。
日々刻々と月は満ち欠けをくり返し、1か月に一度満月をむかえます。
天気が良いと満月の夜は夜と思えない明るさです。
街中では街燈や店の明かりで月夜の明るさを実感する機会はどうしても少なくなってしまいますが、
海とか山に入ると月夜の明るさを強く実感することになります。

旧暦で8月15日の月を「中秋の名月」と呼んでいます。
現行の太陽暦とは異なりますので、今年の中秋の名月は9月22日でした。
当日はあいにくの天気でじっくり月を眺めることはできませんでしたが、
夕方東の空にわずかに見られた名月が翌日の新聞の一面を飾りました。
「団子とススキをお供えしてのお月見」が古くから続く日本人の行事・風習の一つだからです。
 猛暑が去って、季節は秋から冬に向かって寒くなっていきます。
と同時に空気が乾燥してきて夜空の星がその輝きを増していきます。
月もその輝きをこれからますます増していきます。とはいえ夜空の月は毎日見られるわけではありません。
月と地球の位置関係から夜見える月は限られてきますし、曇りや雨ではもちろん見ることができません。
夜空の月に趣を感じる所以の一つです。

夜遅くまで勉強することが多くなる受験生のみなさん。
月夜の晩、勉強に疲れたら、ボーッと月を眺めるのも良いですよ。
月の明かりに疲れを取ってもらいましょう。そんな輝きを月は放っていると思います。

創明館便り
この記事を書いた人
創明館 吉田

塾代表 吉田聡彦 : 練馬区高松(光が丘・夏の雲公園前)にある小学生・中学生・高校生向けのグループ/個人の学習塾を運営しています。
塾運営での想い、感じたこと、発信したいことなどを更新しています。

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