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2008年10月号 | 創明館便り

山梨県と長野県のその県境を端に南北30キロメートルもの山体、八ヶ岳連峰があります。
近くにいくと「八ヶ岳」と呼ばれるその意味がよくわかります。
平地から見上げるその連山は、あれが八ヶ岳ではないかと充分に想像させる姿を見せてくれています。
その主峰である赤岳(2899m)に一昨年の11月に登ったときのことです。

登頂を果たし、下山し始めて1時間ほど経過したとき、一人の高齢の登山者が登山道を黙々と登ってきました。
赤岳の山頂付近の登りはかなり急な登山道が続くのですが、
その登山道を一歩一歩確かめるようにゆっくりゆっくり登ってくるその登山者の姿に私は大変感動しました。

「中高年の登山ブーム」などという言葉が示すように、多くの中高年登山者が山に入っていますが、
グループ登山をしている人が多い中で、高齢の方が一人で登山していると私に強い印象、刺激を与えます。
時間的に山頂の山小屋に宿泊の予定での登山と思われましたが、私が何よりも感動したのはその登ってこられる姿でした。
一歩一歩をしっかりしっかり確かめながら、足を交互に一踏み、一踏み運ぶ姿に、私の目は釘付けになりました。

「オーラを発する」という言葉がありますが、まさにそのオーラを発しながら登山者は登ってきました。
そこまでの登山の大変さは登ってきた私は知っていますし、そこから山頂までの登山道もわかっています。
体力的にかなりきついことは充分に想像されます。
山では、登山者同士がすれ違いざまに「こんにちは」の挨拶をしあったりしますが、
他からの言葉かけ、介入を一切寄せ付けない、そんな雰囲気を体全体から醸しだし、
登山道をとらえる眼光の鋭さに私は圧倒されながらすれ違いました。
「がんばってください」私が心の中で抱いた言葉です。言葉に出すなんてことはできません。
そんな言葉をかけられることを本意としないことはその方の登ってくる姿からわかります。
山に登る人間は山に登る人間の思いの強さ、熟練度を感じ取れます。
私は、登山の先輩にその登山の姿を見せていただき、大きく心が揺さぶられました。感動しました。

その時私は思いました。「あの方のように、かっこよい爺さんになろう」と思いました。
体力的な困難に立ち向かいながら、ハードな山に挑むその姿は、山に登る人間の心意気と登り方を教えていただきました。

大変貴重な出会いでした。あの時の光景、あの時感じたこと、
ほんの1,2分の出会いが今なお心の中に強く印象深く残っています。
生き方の「手本を見る」ということは、話を聞いたり本を読んだりすることに及ばない、と実感してます。 (吉田)

創明館便り
この記事を書いた人
創明館 吉田

塾代表 吉田聡彦 : 練馬区高松(光が丘・夏の雲公園前)にある小学生・中学生・高校生向けのグループ/個人の学習塾を運営しています。
塾運営での想い、感じたこと、発信したいことなどを更新しています。

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